美しいオーストリアワイン

ソムリエ日記

オーストリアワインと言えば「グリューナーフェルトリーナー」ですが、実はなかなか口にする機会の少ないワインかもしれません。しかも今回は「栄光のヴィンテージ」と言われる2021年の上品なグリューナーフェルトリーナーのご紹介です。

Prager(プラーガー)

オーストリア・ヴァッハウ中部ヴァイセンキルヒェン村に700年の歴史を持つ老舗ワイナリーで、先代のフランツ プラーガーはヴァッハウの生産者組合「ヴィネア ヴァッハウ」の設立メンバーの一人としてオーストリアワインの品質向上に尽力されていました。

また、生物学・地形学研究者からワイン造りへと転身した現当主であるトニ・ボーデンシュテインは、「From rock to wine」をモットーに、ヴァッハウで最も標高の高いアハライテン上部区画を自ら開墾するなど勢力的に素晴らしいワインを造り出しています。

余談ですがヴァッハウの生産者組合「ヴィネア ヴァッハウ」所属のワイナリーには土地の個性を活かす為に独自のルールがあり、収穫は全て手摘みで行い、除草剤や農薬は使用しない。醸造では、全てのワインに対してほぼ同じアプローチをする、収穫後、除梗をせずにプレスしステンレスタンクで発酵を行う。その後、最低4週間澱と共に熟成させ、瓶詰め前に濾過など結構厳しい制約があります。その為、プラーガーのワインは全てステンレスタンクのみの醸造となります。

現在プラーガーはオーストリア国内屈指の影響力を持つ専門誌FalstaffとVinariaにおいて最高峰5つ星を獲得し、「これほど偉大なグリューナーが未だかつてあっただろうか」「すぐに完売してしまうため試飲することすらできない」「トニはオーストリアの中で最も優れた(天賦の才を持った)ワインメーカーのひとり」などプラーガーと現当主のトニを大絶賛する声が多くあり、プラーガーはもはやヴァッハウではなく、全オーストリアを代表する生産者と言っても過言ではなく、見かけたら是が非でも手に入れるべき希少価値の高い生産者であるとも言われています。

Gruner Veltliner Wachstum Bodenstein Smaragd 2021

Gruner Veltliner Wachstum Bodenstein Smaragd 2021
(グリューナー フェルトリーナー ヴァッハシュトゥーム ボーデンシュタイン スマラクト)

とにかく長い名前で既に取っつき難い感じですが書いてあることは結構単純で、まず「グリューナー フェルトリーナー」はブドウ品種、「ヴァッハシュトゥーム ボーデンシュタイン」はヴァッハウで最も標高の高いアハライテン上部区画を当主の1人であるトニ・ボーデンシュテインが自ら開墾し名付けた畑、「スマラクト」はオーストリア・ヴァッハウのワインの格付けで最上級となります。

つまり長い銘柄ですが、ブドウ品種、畑の名前、格付けという3つが書いてあるだけです。

2021年というヴィンテージは“今後何年も耳にするであろう栄光のヴィンテージ“と言われる素晴らしい年となり、「完璧なブドウから造られた水晶のように澄み切ったワイン」とも言われています。

早速試飲してみました!

前評判が高いワインはどうしても期待値が高いのでグラスに注いだ時の透明度に驚かされました。

想像よりも淡い透明感のある色合いでグリューナーフェルトリーナーに親しみの無い方は期待値と色合いのギャップにビックリしてしまうかもしれません。

抜栓したては少し閉じ気味で控えめなスモモなどの核果実、柑橘類、ミネラリーで微かにスモーキーなニュアンスの香りですが、口に含むとしっかりとした質感と共にジューシーな果実味が感じられます。第一印象はジューシーな果実味ですが、その後にしっかりとしたボリュームやミネラリーな酸とほろ苦いニュアンスがあり、余韻は長いですが儚さが感じられます。

ただ、14%というアルコール度数を考えるとボリュームはあるもののサラッとした印象です。このバランスが「幽玄」と称される感じなのかなと、なんとなく納得してしまいました。

少し時間が経つと白桃やグレープフルーツなど果実がはっきりしてきますが、全体のバランスはそのままで洗練された雰囲気です。

今回は冷蔵庫で冷やして8℃でスタートしましたが、これくらいの温度からの方が今回合わせた料理には合っていたかなと思います。

グリューナーフェルトリーナー×カニ鍋

今回はたまたまズワイガニをいただいたのでカニ鍋にしてみました。食べ方も家で食べるお鍋ですので特別な調味料ではなくポン酢です。

ワインと合わせてみるとワインの持つ質感とミネラリーな酸が良く合い、生臭さもなく余韻までスッキリと進んで行きます。また、カニの旨味も増幅されもっと食べたくなる組み合わせでした。

様々な要素を併せ持つワインですので、魚介類や甲殻類、鶏や豚などの白身肉など幅広い食材と楽しむ事が出来そうです。

まとめ

結果的に前評判通りの美味しいワインでした!という一言に尽きるのですが、初めて飲むにはなかなかのハードルの価格です。ただワイン会などで1度味わっていただくとその価値に気付いていただけるのではないかと思います。

美味しいワインは本数が少ないのが常ですので、気になる方は是非お早めにお買い求めくださいませ。

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