ボルドーの古酒を気軽に

ソムリエ日記

古酒というと既に高いというイメージがありますが、今回はセカンドラベルという気軽にお楽しみいただけるボルドーワインをご紹介したいと思います。

No2 du Chateau Lafon Rochet 1996

Chateau Lafon Rochet(シャトー ラフォン ロシェ)は16世紀からの長い歴史を持つメドック格付け第4級の老舗ワイナリーであり、シャトーラフィットロートシルト(ポイヤック1級)と2シャトーコスデストゥルネル(サンテステフ2級)に隣接していて環境にも恵まれています。

シャトー ラフォン ロシェのセカンドラベルは短い期間で銘柄の変更やラベルの変更のある銘柄(もしかしたら輸出先で違うのかも)ですが、現在はレ ペルラン ド ラフォン ロシェという銘柄でリリースされている為今回ご紹介する銘柄で新しいヴィンテージのものに出会う事はありません。

つまり今回ご紹介するワインは、現在は生産をされていない貴重なデッドストック品にはなるのですが、それゆえにシャトー ラフォン ロシェのHPを探してもブレンド比率など詳細が分からないという弊害もあります。

以下が参考までのセパージュです。
カベルネ ソーヴィニヨン 55%、メルロー 38%、プティ ヴェルド 4%、カベルネ フラン 3%

セカンドラベルとは?

セカンドとつくとファーストの格落ちのようなイメージがありますが実はそうでない部分が多く、そもそもファーストとは違う区画のブドウで造られていたり、同じ区画の若木から造られていたりします。

勿論イメージ通りに熟成の段階でこのタンク・樽はファーストの基準には達していないと判断されてセカンドになる事もありますが、ファーストに比べて価格は安く品質は十分に美味しいという事でヴィンテージやその年の時事などによっては狙い目と紹介される事もあります。また、生産量にバラつきがある場合が多く、セカンドの方が手に入りづらく希少価値が上がったりすることがあります。面白いですよね。

さて、早速試飲です。

今回は当店に到着してから1週間経った状態で試飲してみました。

キャップシールを取ってみるとカビもなく綺麗な状態です。抜栓時の言い訳をさせてもらえれば、スクリューを差し込んで上げてみると周りにくっつくこともなくスッと上がってきたのでコルクがしっかりしていると思いコルクを上げきる前に手で持って回しながら抜き切ろうとすると、コルクが結構乾いた状態だったのかすぐにヒビが入り慌ててスクリューをもう少し入れてテコの原理で抜き切りました。

古酒ですのでボトル差があるかと思いますが、ご購入された方は通常通り最後までテコの原理で抜いていただければ問題なく抜栓していただけると思います。

グラスに注いで見ると想像より色が濃く、エッジまでしっかりとしています。

入荷1週間後の現在では香りは閉じており味わいも素っ気ないですが、まだまだ若々しさの感じられる力強いタンニンとフレッシュな酸が感じられます。

正直全体のバランスの悪さからも移動の疲れが取れていないコンディションの悪さが分かり易く表れていて、古酒の扱いの難しい部分が出ています。

ただ今回組み合わせた回鍋肉(ホイコーロー)と一緒に飲んでみるとワインの果実が強調され、ワイン単体では素っ気なかったワインがバランス良く感じられました。

抜栓2日目

27年熟成した古酒という事で数日かけて飲めなくなってしまう可能性も考え翌日もテイスティングしてみました。

初日より香り、味わいも感じられ段々とバランスが取れてきていますが、まだタンニンと酸の方が顕著に感じられている状態でしたので早々にヘタレる事はなさそうですので今回はワインだけの試飲としました。

抜栓4日目

一応ご家庭で楽しまれることも想定していますので古酒でも長く楽しめると有難いと思い抜栓4日目まで粘ってみました。

グラスに注いだ時に驚いたのですが、このボトルで4日目が一番良い状態です。

ブラックベリーやラズベリーなどベリー類の果実と濃口醤油やチョコレートパウダーなど古酒らしい複雑さのある香りがあり、凝縮感がありながら過熟さはなく瑞々しさがあり余韻の力強いタンニンも健在でフレッシュな酸と共に軽やかにお楽しむ事が出来ました。

近年のワインはアルコール度数も高くなりがちですが、1996年という天候に恵まれた年でも12.5%とというアルコール度数で全体のスタイルも軽やかなので飲み疲れないです。

古酒には付き物ですが澱(オリ)があります。右のグラスがボトルの上の部分で、左がボトルの最後の部分です。

ボトルには大きな塊があり、グラスに無理やり出したのが右の画像です。
これからも分かるように27年の熟成の中でこれだけの澱が出ているのですが、逆に考えればこれだけ色素、タンニン、酸などが澱として沈殿した状態でこの味わいとなると、リリース当時は飲めたもんじゃなかったのではないか?と思ってしまいます。

今回は手羽元と大根の煮物と合わせてみましたが前回の回鍋肉(ホイコーロー)といい、食べ物と合わせると果実味が増しワイン自体の魅力も上がっていきました。また、全体は軽やかな印象ですがタンニンと酸が健在なので食事と合わせていても満足度がありつつ重たくもならない良いバランスで食事全体を楽しむことが出来ます。

高級レストランのかしこまった雰囲気の中でいただくのであればもっと全体の要素が強いワインが良いと思いますが、家庭をはじめ気さくな雰囲気のレストランの中でこんなワインがあったら嬉しいかなと思います。

まとめ

抜栓初日の様子でも感じていただけるかと思いますが、古酒は移動からのコンディションの回復に時間がかかってしまいます。これは古酒を楽しむ上ではどうしても避けては通れないのですが、売る側としても当然良いコンディションで飲んでいただきたいので到着1週間で試飲をしてみました。

結果としてコルクの乾き具合からしても澱の落ち方からしても、思ったより早く楽しんでいただけそうで安心しました。

食事との組み合わせとしては味噌や醤油との相性が良く日本の家庭料理でもお楽しみいただけ、まだ数年の熟成のポテンシャルはありそうですので御自宅で楽しまれるのに数本あっても良いのかなと思います。また、今回はボルドー型のワイングラスを使用し、アルコール度数の低さもあり少々冷たい状態からでも十分にお楽しみいただける汎用性の高さも魅力です。

熟成ワインかつデッドストック品ですので数に限りがありますが、興味のある方は是非お早めにお試しくださいませ。

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