今回はフランス・ブルゴーニュ地方の隠れた銘醸地と称されることの多いサントーバンで、マルク コランやユベール ラミーと並び高い評価を受けるHenri Prudhon(アンリ プリュードン)が初めて入荷しましたのでご紹介と共に試飲した実感をご紹介したいと思います。
Henri Prudhon(アンリ プリュードン)
1983年に初めて瓶詰を始め、現在は3代目のヴァンサン氏とフィリップ氏がワイナリーを取り仕切っているサントーバンで最も古い一族の1つです。アンリ プリュードンは認証は取っていないもののオーガニックなアプローチでブドウ栽培を行なっており、ワインは基本的にブレンドされず区画ごとにリリースされる少量多種ですが、2021年は劇的な収穫量減で特別にブレンドワインも生産されています。
アンリ プリュードンはブルゴーニュの専門家から注目されており、日本で有名なロバート パーカー氏の著書「バーガンディー」ではマルク コランらと並び「優良生産者」として取り上げられ「才能豊かで熱心な作り手」として紹介されています。また、アラン メドー氏から「プリュードンのワインは、金額に対して優れた品質を提供している」、ジャスパー モリスMWから「サン トーバンで著名なドメーヌ、象徴的な存在」、ジャンシス ロビンソン女史から「品質は素晴らしいのに、世間的認知が浅いために値ごろな価格の注目すべきドメーヌである」など絶賛をされています。
Saint Aubin(サントーバン)
上記の紹介からイメージするとブルゴーニュ地方の狙い目な生産地域かと思いますが、実は難しい生産地域でもあると思います。
簡単なサントーバンの概要ですが、シャサーニュモンラッシェとピュリニーモンラッシェという有名産地の西側の丘陵に位置し、赤・白の両方のワインが生産されますが約8割くらいが白ワインで、その2/3がプルミエクリュです。
さて、冒頭に「実は難しい生産地域」といった理由としては、サントーバンは石灰質土壌からミネラリーでエレガントな白ワインが多いからです。ですので、昨今のブルゴーニュワインによくある華やかで、果実の厚みが合って、親しみ易い味わいでない事が多いので、価格の割に物足りないと感じる場合があります。勿論プルミエクリュともなれば充実感はありますが、好みが分かれるような気がします。
Saint Aubin Blanc 2021(サントーバン ブラン)
アンリ プリュードンのサントーバンはプルミエクリュを含め数種類入荷していますが、今回はそのエントリーとなるヴィラージュクラスを試飲してみました。
色は透明感のあるレモンイエローで、開けたてはレモンなど高い酸を連想させる果実とミネラルが感じられる控えめな香りがあり、粘性のあるしっとりとした口当たりから香りの印象と同様にレモンやグレープフルーツなど柑橘類、早生りんごや青リンゴなど核果実のフレッシュな果実味と酸があり、後半にアルコールのボリュームが広がっていきます。また、酸が全体を引き締めスッキリとした余韻の楽しめる白ワインです。
今回は10℃スタート、ブルゴーニュグラスで試飲しました。
抜栓2日目
初日は所謂還元的な香りもあったので2日目は香りが上がるのかなと思っていましたが、それでも控えめな感じでした。
ただ初日とは違いレモンやグレープフルーツなど柑橘が中心だったのが、少し柔らかくなり早生りんごや青りんごなど核果実のニュアンスが強く感じられるようになりました。また、余韻にほろ苦さなどのアクセントを加わり複雑味も出ていています。
初日と変わらずスッキリとした瑞々しい果実味とミネラリーな酸が全体を引き締めている印象です。
抜栓3日目
控えめながら日に日に果実中心の香りが強く感じられ味わいも同じような傾向ですが、しっかりと抑制が効いていますのでスッキリとした印象は初日からブレません。
取り扱いのポイントとしては冷蔵庫(8℃くらい)でしっかり冷やしていただく事で、ミネラリーな酸とのバランスが合って違和感なくお楽しみいただけるかと思います。
食べ合わせについて
初日は煮魚、長芋の磯部揚げ、蕪と胡瓜の酢の物と合わせてみました。
煮魚、蕪と胡瓜の酢の物は違和感なく、煮魚は醤油の濃度の部分で心配しましたが問題なく、酢の物はワインの果実味が強調され美味しく合わせる事が出来ました。
意外だったのは長芋の磯部揚げで、ミネラリーな酸と青のりが合うかなと思っていたのですが余韻の部分で苦味があり、ワインのスッキリしたスタイルが揚げ物の油っぽさをスッキリとさせてくれるので全然合わないとは言いませんがちょっとした違和感が残りました。
2日目は鶏ももと大根の煮物、アスパラガスの半熟玉添え、カニカマ、新玉ねぎ、胡瓜の酢の物と合わせてみました。この日はどれも違和感がなく美味しい食卓となりました。
2日間の食べ合わせで感じたのは、甘辛い味付けと酢の物との相性の良さです。特に酢の物はワインの果実味を豊かにさせてくれるので、このワインをより味わいたい方にはお勧めです。
3日目は近所の農家さんから朝日村特産のレタスをいただいたので肉みそを作り、ナムル、チーズと共にレタス包み?と合わせてみました。
初日の青のりとの組み合わせが何となく引っかかっており、肉みそにひじきを入れてみました。味付けはシンプルに砂糖、味噌、醤油、少しだけオイスターソースで、ちょっと濃いめにしました。
今日も違和感なく美味しい食卓でした。
結果的に和食、中華料理との相性が良いように感じましたし、変に青背魚やシチュー、グラタンなどと合わせない限りは意外と汎用性が高いように感じました。
まとめ
3日間の試飲を通して「ワインに求めるものが何か?」にもよりますが、アペラシオン(生産地域)の特徴をしっかりと表現している造り手ではないかと思います。第一印象から強烈な印象を受ける訳ではないのですが、サントーバンらしい涼やかでタイトなスタイルでありながら過不足がなくバランスが取れており、飲んでいて満足感があります。
ただ、2021年の現段階でワインを飲み始めた方にお勧めするというよりは、ある程度ブルゴーニュワインを飲み慣れている方へお勧めしたいアペラシオン(生産地域)かなと思います。プルミエクリュになると厚みのある銘柄もありますので、ワインを飲み始めた方にはそちらがお勧めですかね。
タイトルにもある通り暑くなるこれからの季節にしっかりと冷やしてお召し上がりいただくと、清涼感とミネラリーな酸と相まってより美味しいと思います。
何より今の御時世にヴィラージュクラス(村名)を変えるのは有り難いです!数が少ないですので気になる方はお早めにご検討くださいませ。
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