無濾過(むろか)のワインについて

ソムリエ日記

最近当店が取り扱っているワインについて「これなんですか?」というお客様からのご質問がありましたので、直接聞くのは気が引けるけど気になっていた!という方の為にもこのご質問についてお話していきたいと思います。

まず、お客様からいただいたご質問を紹介します。
「瓶のそこにザラザラしたものがあるのですが、これなんですか?」というご質問でした。

今回ご質問いただいたワインですが、当店PBワインであるミノリ 2019とベル ヴェデーレ 2019の2種類で、どちらも当店での人気銘柄であり、カンティーナ・リエゾーという同じ生産者が造っているワインです。この2種類の共通点は、「無濾過(むろか)」という製造方法で造られている点です。

続いて、瓶のそこにある物の正体についてお話します。
今回瓶の中にあるザラザラしたものの正体は「酒石」というものです。
では酒石って何?という話ですが、正式名称は「酒石酸モノカリウム」という物質で、ワイン中の酒石酸とカリウムが結合したものです。

ワインの原料である葡萄には酒石酸・リンゴ酸・クエン酸が含まれており、ワインになった後も液体中に存在します。そこにワインに含まれるミネラルの一種であるカリウムが結合して結晶化したものが、今回のザラザラの正体でる酒石なのです。
※ちなみに酒石は温度が低いほど結合して生成されやすくなります。

ここでよくあるご質問が「澱とは違うの?」と「いつも買っているワインでこんなの見たことない。」です。

まず澱と酒石の違いですが、簡潔に言えば「澱=熟成の過程で生まれるもの」、「酒石はワインになった時点で生まれるもの」の違いです。ちなみにどちらも体に健康上の害はありません。

次に大多数のワインに見られない理由についてですが、生産量が多く、流通範囲が広いワイナリーはリスクヘッジを考えた品質と販売戦略を優先しますので、ろ過をしたキレイな状態で販売をするので今回の様な状態にはなりません。

ろ過をしない無濾過のワインは何故造られるのでしょうか?

今回の様に「これなんですか?」という質問を受けかねないのに無濾過で瓶詰めするのでしょうか?

基本的に無濾過のワインをリリースしているワイナリーは小規模な生産者が多く、拘りの強い方が多いように感じます。この方々は総じて栽培地の特徴やブドウ品種のポテンシャルを最大限に表現したいと思っている方ばかりで、フィルターを通す(ろ過)と少なからず香りや味わいが失われる事をご存じで、ワインのポテンシャルを最大限活かす事を最優先とし無濾過で瓶詰めされます。

それはそうですよね。1年間かけて苦労して栽培をしたからには最大限ブドウを活かしたいと思うのは当然だと思います。

無濾過ワインの取り扱いについて

無濾過のワインにも色々とパターンがあるのですが、今回の様な固形がしっかりとしている場合は澱と同じ様に基本的に入らないように扱っていただければと思います。

中には大きな塊はなく瓶の底がやや濁っている無濾過ワインもあります。
その場合は基本的には入らないように楽んでいただいて、半分か2/3くらいになると濁りを混ぜていただいてニュアンスを変えてお楽しみもいただけます。

この様にワインという中には造り手の拘りによって様々なタイプのワインがあります。
生産者の規模によっても面白い・美味しいワインに出会えるかもしれません。是非色々な生産者を試してみてください。

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